先日、自分の不注意でフロントガラスを割ってしまいました(ヒビが入った)。10万円以上の無駄な出費を強いられました。これ自体はケガをしたわけではなく労働災害ではないんですが、気の緩みが招いたものです。このまま漫然とDIYを続けていると、いつか大きな災害が起こる可能性があります。事業場ではないので労働安全衛生法(安衛法)が適用されるわけではありませんが、念のためリスクについて再確認しておこうと考えました。
災害発生状況
自動車整備業での災害発生状況ですが、事故の類型別に見ると2015年から2020年の平均で、墜落・転落21%、はさまれ・巻き込まれ19%、転倒14%、動作の反動・無理な動作11%、飛来・落下9%、その他26%となっています。DIY作業では墜落するほどの高所作業はないと思いますが、はさまれ・巻き込まれや無理な動作は注意する必要があります。
年齢別発生状況では、60歳以上が25%と最も大きな割合を占めています。やはり歳をとってくるにつれて事故を起こす確率が増えるようです。気を付けないといけません。体力、注意力の衰えのほかに、ベテランバイアスがかかってくるような気がします。
労働災害分析データ(中災防)
リスクとは
リスクとは「危険性又は有害性によって生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び発生する可能性の度合」とされています。危険性又は有害性をハザードといいます。ハザードと人が接触することによってリスクが発生します。
リスクアセスメントとは
その目的は、「潜在する労働災害の発生原因となる危険性又は有害性を計画段階や施工段階で洗い出し、それに対する「災害の重大性の度合い(重篤度)」と「災害発生の可能性の度合い」を見積もり、評価してリスクレベルの優先度から、リスクの除去・低減措置を施す手法」です。
進め方は下記のとおりです。
- 危険性又は有害性の洗い出し(特定) :ハザードの特定
- リスクの見積もり(優先度の決定):重篤度と発生可能性を見積りリスクレベルから優先度を判定
- リスク低減措置内容の検討 :リスクの除去、隔離(工学的対策)、回避(管理的対策、個人用保護具)
- リスク低減措置の実施
- 実施結果の記録
自動車整備の具体的なリスクアセスメントの進め方については厚生労働省がマニュアルを出しています。
自動車整備業における リスクアセスメントマニュアル(厚生労働省・中央労働災害防止協会、協力 社団法人日本自動車整備振興会連合会)
私の作業で考えられる危険性又は有害性(ハザード)
- ガレージジャッキ: 短時間作業だからとリジッドラックを使用せず車の下で作業していると、ジャッキの油圧が抜けて車体に挟まれる。
- ガレージジャッキ: 同じくリジッドラックを使用せず車の下にもぐっていると、ハンドルを誰かが緩めて下敷きになる。
- ガレージジャッキ: 同じくリジッドラックを使用せず、ジャッキのハンドルを寝かしたままにしていたら、通行車両がハンドルにあたってジャッキが外れて下敷きになる。
- ガレージジャッキ: 定格以上の重量を上げたためバランスをくずし車両が落下する。
- ガレージジャッキ、リジッドラック: コンクリート舗装をしていないところでリフトアップしたところジャッキ、ラックが傾いて車両が落下する。
- リジッドラック: 車体を高く上げたところ、地面に傾斜がついていたのでラックが転倒し落下する。
- リジッドラック: 前をラックに乗せたあとフロアジャッキで後ろを上げようとしたところ、車が後ろに移動してラックが不安定になる。
- 車の下の作業: 保護メガネをせずに上を向いて作業していたら、何かの破片が目に入る。
- グラインダー: 保護メガネをせずに研摩・切断中、破片が目に入る。
- グラインダー: 研削砥石が割れて飛散しけがをする。
- バッテリー充電器: 誤ってショートさせる。
- 車止め: 車止めをせず、ハンドブレーキもかけていなかったので勝手に車が動いて挟まれる。
- エンジン: エキスパンションタンクのキャップを開けたところクーラントが噴出してやけどする。
- エンジン:エンジンを稼働中に手を入れたところ、ファンやベルトに触れてけがをする。
- エアバッグ: バッテリーを外さずに、エアバッグ周辺の作業をしたところ突然エアバッグが展開して負傷する。
- シリコンスプレー、ブレーキクリーナー:狭い空間で使用していたら吸い込んで気分が悪くなる。
- 塗装: 屋内で塗装していたら吸い込んで気分が悪くなる。
- 屋外作業: 真夏に直射日光を浴びながら作業して熱中症になる。
- タイヤ交換:タイヤを持ち上げたところぎっくり腰になる。
- 無理な姿勢:エンジンルームをのぞき込む作業を長時間していたら腰を痛める。
- エンジンオイル:下抜き作業をしていたら熱いオイルを浴びる。
などなど
上のハザードに対してリスクを見積もってリスク低減策を考える
DIY作業にあんまり厳密な見積もりをやっても仕方ないので、重篤度を1軽微、2重大、3極めて重大の3段階、発生可能性を1ほとんど起こらない、2たまに起こる、3かなり起こるの3段階に分類しその数字を掛け算で求めます。その数値によってリスク低減措置の優先順位を決めます。見積方法には掛け算法の他に、加算法、マトリクス法などがあります。
ハザード番号の3のガレージジャッキ関連は、重篤度3X可能性2=6もしくは3X3=9になると思います。やはり下にもぐる作業は失敗すると致命的なので十分注意する必要があります。
リスク低減策としては、ガレージジャッキのリスクを除去するためにリジッドラックを使用する。経済的余裕があればピットを作ればいいでしょう。ガレージジャッキを定期的に検査し瑕疵の無いようにする。また作業の手順書を作業前に作成する。きちんと手順を確認して面倒だと思わずに作業することが重要です。その他、個人的保護具として保護メガネを着用することも必要です。
労働災害でなくとも、車にダメージを与えるようなリスクも存在します。
常にリスクを意識しながら作業前の確認をすることで事故が減らせるのではないでしょうか。